ビジネスクラスター (国際貿易) 教授 岩田伸人

グローバルな自由貿易とローカルな国内市場を両立させるにはどうすればよいか

早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。高千穂商科大学(現、高千穂大学)の助教授を経て現在に至る。専門分野は国際貿易。実家がミカン農家だったため、とくに自由貿易体制の下で国内の農業・農産物が被る問題に強い関心をもつ。以後、WTO(世界貿易機関)の研究を中心に、グローバリゼーションの下で発生する食料自給率の低下などの国内問題や、国々の間で生じる貿易に関する諸問題について研究。

一昨年までは日本経済団体連合会などのTPP問題に取り組み、シンポジウムも開催。近年は、トランプ米国政権が掲げる「アメリカ・ファースト」の保護主義的な貿易政策がもたらす問題や、国々がまとまって一つのグループ(経済統合)を結成することで生じる問題など、自由貿易体制の研究に精力的に取り組んでいる。本学のWTO研究センター所長を2003年から昨年度まで14年間務めた。

これまでの私の仕事

先進国と途上国の格差問題を通して、自由貿易のあるべき仕組みやルールを研究


2015年にモンゴル鉱山の調査に行った時

1970年代に日米間でオレンジの自由化が決まり、ミカン農家の廃業が問題になり始めました。私の実家もミカン農家だったのですが、その影響により家業を継ぐことをやめ、大学で国際貿易について学びました。さらに大学院で研究を進め、その後、国際貿易に関わる諸問題について教えるようになっていきました。

私がこの研究を始めた80年代の日本は、オレンジや牛肉など米国産の農産物の輸入自由化を進めるべきか否かが大きな問題となっており、自由化した場合に起きるさまざまな課題について、どんな解決法があるかを研究することが大きなテーマでした。そのなかで、国際貿易の仕組みもどんどん変わり、GATTからWTOへの移行過程で発生した農作物紛争を中心に研究した論文で博士号を取得。当初、実家が農家だった私は自由貿易が広まることに懐疑的でしたが、GATT事務局スタッフなどとの交流を通して自分の視野が広がり、自由貿易体制のメリット・デメリットについて再認識するようになっていきました。

近年は、TPPのように複数の国が寄り集まって国境を超えた大きな市場を作り出す地域貿易統合の動きが活発になっており、これも自由貿易の大きなテーマになっています。貿易から得られる利益は、今までの経済優先から政治と経済の両方の合体利益へと変わってきています。今までの欧米主導の貿易体制(WTO体制)に加えて、最近は中国を中心とするグループ、ロシアを中心とするグループなど、さまざまな勢力の動きが見られます。これらの動きも、最近の私の大きな研究テーマになっています。

私の授業はここが面白い

現在および将来の国際貿易がどうあるべきかを、大いに議論するための材料(知識)を提供する

授業では、これから世の中がどのように変わっていくかを考えながら、正しいことと間違っていることの区別と判断を行うために必要な、基本的な用語や概念を確実に理解できるよう進めています。例えば、近年EU(欧州連合)を揺るがす大きな問題になっている移民について。ヒト、モノ、カネの域内移動を自由化してきたEUですが、シリア難民の問題や移民による文化的摩擦、雇用の問題などにより、「ヒト」の自由な移動について制限しようとする動きが出てきています。

この動きについて、国際貿易の観点から言えば、人々があいまいにしているのが「ヒト」の定義です。移動するヒトにも二つのタイプがあり、経済活動が目的で外国へ移動する「移民」と、自分の国から避難してきた「難民」があります。これら2つのタイプの「ヒト」をわけて議論しないと、話しがかみ合いません。授業では、このような現実に今起こっている問題について基本的な用語の定義やその背景を学びます。さらに国際貿易の仕組みを知り、現状または将来においてどのような解決方法があるかについて、諸外国の人々と一緒に議論するための正しい見方や知識を習得します。

受験生へのメッセージ

今起きている社会の問題をもっと掘り下げて、その正しい解決策を考えよう

表面的な知識を得るだけでなく、問題意識を強くもって、深く学んでほしいですね。地球社会共生について問題意識をもつためには、世界を自分の目で見ることがおすすめですが、現地を表面的に見るのではなく、なるべく現地の人と同じものを食べ、同じことをしてみて、現地に溶け込んで現地の人と同じ目線で見ることが大事だと思います。また、同時に日本の良い部分や悪い部分など、日本のこともしっかり理解しておいてほしいです。